フリーランス新法第八条|公正取引委員会が「勧告」するのはどんな時?

フリーランスと事業者がお互いにもっと働きやすくなるために、フリーランス新法に何が定めてあるのかを読み解くシリーズ。

第八条は違反の事実を認めた後、公正取引委員会は何をするのかについて定められました。

ここまでの条文で定められた事業者に対する規制をおさらいすることもできる条文です。

「違反している」「違反した」など細かいニュアンスごとに条文が作られていますが、公正取引委員会は何をするのかに注目して条文を読むことが大切だと思います。

新しいルールを理解して、お互いが気持ちよく働けるような環境を整えましょう。

働くヘルメット

執筆者:佐藤きなこ
行政書士試験に合格後、現在事務所開設に向けて邁進中です。公正取引委員会、厚生労働省、中小企業庁のフリーランス新法関連ページを読破しました。フリーランスと企業がそれぞれ気持ちよく働くためのヒント情報をどこよりもわかりやすく解説することに挑戦中です。

フリーランス新法第八条(勧告)を全体的に捉えよう

第八条には

「事業者がこの法律に違反した、または違反している事実があると認められた場合は、公正取引委員会はそれを止めてください、と事業者に勧告することができます。」

といったことが定められました。

第七条でも少し触れましたが、公正取引委員会とはそもそも「独占禁止法」を運用するために作られた組織で、そのために必要な権限が与えられています。

独占禁止法の目的について公正取引委員会公式サイトでは

この独占禁止法の目的は,公正かつ自由な競争を促進し,事業者が自主的な判断で自由に活動できるようにすることです。
引用元)独占禁止法の概要

と説明されています。つまり「不平等で、他の事業者が自由に競争できないような不健全な活動は取り締まります」とも言い換えることができ、その取り締まる権限を公正取引委員会に与えているのです。

これまでのフリーランスになじみ深い法律の一つに下請法がありますが、下請法と同じくこのフリーランス新法も運用していく上で必要な権限が公正取引委員会に与えられています。

フリーランス新法は事業者が健全に事業活動をしていくために必要なことが定められています。ですが条文が読みづらいな、と感じた時はこの公正取引委員会のできた経緯を思い浮かべてから改めて読むと、意味がすんなり理解できるかもしれません。

フリーランス新法の正式名称について

フリーランス新法は令和6年11月1日施行されます。

この法律の正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」です。

また内閣官房や中小企業庁などの資料やサイトでは「(フリーランス・事業者間取引適正化等法)」が続きます。こちらの方が法律の内容が想像しやすいですね。

いずれにしろとても長いタイトルだからか、フリーランス法またはフリーランス新法という通称が根付きつつあります。

※ここから↓の条文は全てe-Gov法令検索「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」から引用しました。

【条文】フリーランス新法第八条|第三条規定違反

公正取引委員会は、業務委託事業者が第三条の規定に違反したと認めるときは、当該業務委託事業者に対し、速やかに同条第一項の規定による明示又は同条第二項の規定による書面の交付をすべきことその他必要な措置をとるべきことを勧告することができる。

1項の勧告の対象とは

1項の対象

対象
業務委託事業者(事業者全般)
どんな時に勧告される?
フリーランスに対して明示するべきことを明示していない事実があった時
勧告の内容は?
「書面を交付、またはその他に必要な措置をとりなさい」と勧告される

【条文】フリーランス新法第八条2項|第四条5項規定違反

公正取引委員会は、特定業務委託事業者が第四条第五項の規定に違反したと認めるときは、当該特定業務委託事業者に対し、速やかに報酬を支払うべきことその他必要な措置をとるべきことを勧告することができる。

2項の勧告の対象とは

2項の対象

対象
特定業務委託事業者(従業員を使用する事業者)
どんな時に勧告される?
報酬の支払い期日に関する規定に違反した事実があった場合
勧告の内容は?
速やかに報酬を支払うか、「その他必要な措置をとりなさい」と勧告される

【条文】フリーランス新法第八条3項|第五条1項一号規定違反

公正取引委員会は、特定業務委託事業者が第五条第一項(第一号に係る部分に限る。)の規定に違反していると認めるときは、当該特定業務委託事業者に対し、速やかに特定受託事業者の給付を受領すべきことその他必要な措置をとるべきことを勧告することができる。

3項の勧告の対象とは

3項の対象

対象
特定業務委託事業者(従業員を使用する事業者)
どんな時に勧告される?
受領許否に関する規定に違反している事実があった場合
勧告の内容は?
速やかに給付を受領するか、「その他必要な措置をとりなさい」と勧告される

【条文】フリーランス新法第八条4項|第五条1項二~五号規定違反

公正取引委員会は、特定業務委託事業者が第五条第一項(第一号に係る部分を除く。)の規定に違反したと認めるときは、当該特定業務委託事業者に対し、速やかにその報酬の額から減じた額を支払い、特定受託事業者の給付に係る物を再び引き取り、その報酬の額を引き上げ、又はその購入させた物を引き取るべきことその他必要な措置をとるべきことを勧告することができる。

4項の勧告の対象とは

4項の対象

対象
特定業務委託事業者(従業員を使用する事業者)
どんな時に勧告される?
報酬減額、返品、買いたたき、購入/利用の強制規定に違反した事実があった場合
勧告の内容は?
速やかにそれらの問題を解決するか、「その他必要な措置をとりなさい」と勧告される

【条文】フリーランス新法第八条5項|第五条2項規定違反

公正取引委員会は、特定業務委託事業者が第五条第二項の規定に違反したと認めるときは、当該特定業務委託事業者に対し、速やかに当該特定受託事業者の利益を保護するため必要な措置をとるべきことを勧告することができる。

5項の勧告の対象とは

5項の対象

対象
特定業務委託事業者(従業員を使用する事業者)
どんな時に勧告される?
フリーランスに対する不当な扱いの禁止規定に違反した事実があった場合
勧告の内容は?
「速やかにフリーランスの利益を保護するために必要な措置をとりなさい」と勧告される

【条文】フリーランス新法第八条6項|第六条3項違反

公正取引委員会は、業務委託事業者が第六条第三項の規定に違反していると認めるときは、当該業務委託事業者に対し、速やかに不利益な取扱いをやめるべきことその他必要な措置をとるべきことを勧告することができる。

6項の勧告の対象とは

6項の対象

対象
業務委託事業者(事業者全般)
どんな時に勧告される?
違反事実を申出たフリーランスに対する不利益な扱いの禁止規定に違反した事実があった場合
勧告の内容は?
速やかにフリーランスの笛利器な取扱いをやめ、「その他必要な措置をとりなさい」と勧告される

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