フリーランス新法第七条|この法律が中小企業庁長官に与えた権限とは?

フリーランスと事業者がお互いにもっと働きやすくなるために、フリーランス新法に何が定めてあるのかを読み解くシリーズ。

第七条はこの法律における「中小企業庁長官の仕事」について定められました。

フリーランスから「事業者の違反」について報告を受けた中小企業庁長官は何をしなければいけないのでしょうか。

新しいルールを理解して、お互いが気持ちよく働けるような環境を整えましょう。

働くヘルメット

執筆者:佐藤きなこ
行政書士試験に合格後、現在事務所開設に向けて邁進中です。公正取引委員会、厚生労働省、中小企業庁のフリーランス新法関連ページを読破しました。フリーランスと企業がそれぞれ気持ちよく働くためのヒント情報をどこよりもわかりやすく解説することに挑戦中です。

フリーランス新法-第七条(中小企業庁長官の請求)を全体的に捉えよう

第七条を簡潔にまとめると

・中小企業庁の長官は、発注事業者側がこの法律に違反しているかどうかを調査することができる。
・調査の結果、違反が事実だった時は公正取引委員会に「ふさわしい措置をとってほしい」と求めることができる。

の2点です。

こうしてみると、中小企業庁長官は「調査すること」ができるだけで、実質的な措置をとる権限は公正取引委員会にある、と読めます。

中小企業庁長官の立場はあまり強くないように思えますね。

これは二つの組織の担うそもそもの目的や役割が違うためではないか、と考えられます。

公正取引委員会の存在意義としては

公正取引委員会は、独占禁止法を運用するために設置された機関で、独占禁止法の補完法である下請法の運用も行っています。

イノベーション活性化など市場経済のメリットを最大限に引き出すための競争政策として、社会経済環境の変化に的確に対応した法執行及び競争の活性化に関する提言(アドボカシー)を行うことが当委員会の使命です。
引用元)公正取引委員会とはー私たちの使命ー

とされ、組織自体は独禁法を適切に運用するために設置されたものであり、おそらくフリーランス新法も下請法と同じく補完法という位置付けで運用されることから、公正取引委員会に強く取り締まる権限を与えられていることが想像できます。

また、中小企業庁の存在意義としては

中小企業庁は、中小企業庁設置法第1条の目的「健全な独立の中小企業(注)が、国民経済を健全にし、及び発達させ、経済力の集中を防止し、且つ、企業を営もうとする者に対し、公平な事業活動の機会を確保するものであるのに鑑み、中小企業を育成し、及び発展させ、且つ、その経営を向上させるに足る諸条件を確立する」を達成することを任務としており、当該任務達成のため、…(以下略)
引用元)中小企業庁の任務

とされています。

どちらかというと、これから事業を営もうとしている人に向けて平等に機会を与え、経済全体の発展のために働く組織だという印象を受けます。

ですので、中小企業庁が日々経済発展の為に働いてる中で、それを阻む原因となる活動を見つけ、それがフリーランス新法に違反するものなら公正取引委員会に報告しよう、という構造になっているのではないかと考えます。

中小企業庁と公正取引委員会の組織としての目的を確認した上で、中小企業庁長官がこの法律上どのようなことが出来るのかを明確にした条文が第七条だといえます。

フリーランス新法の正式名称について

フリーランス新法は令和6年11月1日施行されます。

この法律の正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」です。

また内閣官房や中小企業庁などの資料やサイトでは「(フリーランス・事業者間取引適正化等法)」が続きます。こちらの方が法律の内容が想像しやすいですね。

いずれにしろとても長いタイトルだからか、フリーランス法またはフリーランス新法という通称が根付きつつあります。

※ここから↓の条文は全てe-Gov法令検索「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」から引用しました。

【条文】フリーランス新法第七条|明示義務は必ず守ってほしい

中小企業庁長官は、業務委託事業者について、第三条の規定に違反したかどうか又は前条第三項の規定に違反しているかどうかを調査し、その事実があると認めるときは、公正取引委員会に対し、この法律の規定に従い適当な措置をとるべきことを求めることができる。

事業者に対して中小企業庁長官ができることとは?

中小企業庁長官にできること1

対象
→業務委託をする事業者側
調査内容
→フリーランスに明示しなければいけないことが明示されているか。また事業者の違反行為を申出たフリーランスのことを不利益な扱いをしていないか
中小企業庁長官のできること
→調査の結果、違反行為が事実なら公正取引委員会へ措置を求めることができる

【条文】フリーランス新法第七条2項|従業員を使用する事業者は要注意

中小企業庁長官は、特定業務委託事業者について、第四条第五項若しくは第五条第一項(第一号に係る部分を除く。)若しくは第二項の規定に違反したかどうか又は同条第一項(同号に係る部分に限る。)の規定に違反しているかどうかを調査し、その事実があると認めるときは、公正取引委員会に対し、この法律の規定に従い適当な措置をとるべきことを求めることができる。

従業員を抱える事業者に対して中小企業庁長官ができることとは?

中小企業庁長官にできること2

対象
→業務委託をする事業者の中でも従業員を使用している事業者
調査内容
→報酬支払期日を守っているか(第四条5項)/禁止行為はされていないか/フリーランスの利益を害していないか(第五条)など
中小企業庁長官のできること
→調査の結果、違反行為が事実なら公正取引委員会へ措置を求めることができる

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