フリーランス新法第四条|報酬の支払い期日に関するルールがはっきり決定

フリーランス新法が令和6年11月1日施行されます。

このブログはフリーランスと事業者がお互いにもっと働きやすくなるように、フリーランス新法に何が定めてあるのかを読み解くシリーズです。

第四条は、事業者からフリーランスへ支払う報酬の「期日」に関するルールです。

うっかり報酬支払期日を定めてないと、フリーランスが業務終了したと同時に支払いを請求される恐れもあります。

新しいルールを理解して、お互いが気持ちよく働けるような環境を整えましょう。

この記事でわかること
・パターン別にどう報酬の支払い期日を決めなければいけないのか
・事業者が気を付けなければならないこと

こんな方におススメ記事です
・支払期日が明確にされてない場合はどうなるのかが知りたいフリーランスの方へ
・支払い期日をどのように決めたら良いか迷っている事業者の方へ

働くヘルメット

執筆者:佐藤きなこ
行政書士試験に合格後、現在事務所開設に向けて邁進中です。公正取引委員会、厚生労働省、中小企業庁のフリーランス新法関連ページを読破しました。フリーランスと企業がそれぞれ気持ちよく働くためのヒント情報をどこよりもわかりやすく解説することに挑戦中です。

フリーランス新法第四条(報酬の支払期日等)を全体的に捉えよう

最初に第四条には何が定められているのかを全体的に把握しましょう。

図解第四条

第四条は
・事業者からフリーランスへ通常の業務委託をする場合の報酬支払期日のルール(1項、2項)
・別の事業者から委託された事業者が、その業務の全部又は一部をフリーランスへ再委託する際の報酬支払期日のルール(3項、4項)
・フリーランス側に何らかの事由があって報酬が支払えない場合のルール
・別の事業者から委託された事業者が前払金を受け取っている場合に、フリーランスへも配慮する必要があること(6項)
が定められました。

フリーランス新法の正式名称について

この法律の正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」です。

また内閣官房や中小企業庁などの資料やサイトでは「(フリーランス・事業者間取引適正化等法)」が続きます。こちらの方が法律の内容が想像しやすいですね。

いずれにしろとても長いタイトルだからか、フリーランス法またはフリーランス新法という通称が根付きつつあります。

※ここから↓の条文は全てe-Gov法令検索「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」から引用しました。

【条文】フリーランス新法第四条|通常の報酬支払期日

特定業務委託事業者が特定受託事業者に対し業務委託をした場合における報酬の支払期日は、当該特定業務委託事業者が特定受託事業者の給付の内容について検査をするかどうかを問わず、当該特定業務委託事業者が特定受託事業者の給付を受領した日(第二条第三項第二号に該当する業務委託をした場合にあっては、特定受託事業者から当該役務の提供を受けた日。次項において同じ。)から起算して六十日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない。

事業者はどのように報酬支払期日を定めればよい?

報酬の支払い期日

・フリーランスから「給付」「役務の提供」があった日を1日目とし、その日から60日以内に支払う。

・「給付」「役務の提供」を検査するかどうかは考えない。(検査するからといって60日より後に支払い期日を定めることはできない。)

・1日目から「できるだけ早く」支払い期日を設定しなければいけない。(理由もなく「59日に」としてはいけない)

【条文】フリーランス新法第四条2項|1項に従ってない場合

前項の場合において、報酬の支払期日が定められなかったときは特定業務委託事業者が特定受託事業者の給付を受領した日が、同項の規定に違反して報酬の支払期日が定められたときは特定業務委託事業者が特定受託事業者の給付を受領した日から起算して六十日を経過する日が、それぞれ報酬の支払期日と定められたものとみなす。

支払い期日が1項のルールに従ってない場合はどうなるのか?

こんなときは?1

・支払期日が決まってなかった場合、フリーランスから「給付」「役務の提供」があった日が支払い期日になる。

・61日以降に支払い期日が定められてしまった時は、60日目を支払い期日に定めたことになる。

「うっかり期日を定めるのを失念していた」なんてことがあると、急に報酬を求められることにもなりかねません。事業者側は自身の信用を守るためにも期日を定め、第三条に従って明示しましょう。

【条文】フリーランス新法第四条3項|元委託がいる場合の報酬支払期日

前二項の規定にかかわらず、他の事業者(以下この項及び第六項において「元委託者」という。)から業務委託を受けた特定業務委託事業者が、当該業務委託に係る業務(以下この項及び第六項において「元委託業務」という。)の全部又は一部について特定受託事業者に再委託をした場合(前条第一項の規定により再委託である旨、元委託者の氏名又は名称、元委託業務の対価の支払期日(以下この項及び次項において「元委託支払期日」という。)その他の公正取引委員会規則で定める事項を特定受託事業者に対し明示した場合に限る。)には、当該再委託に係る報酬の支払期日は、元委託支払期日から起算して三十日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない。

元委託事業者がいる場合のフリーランスへの報酬支払期日はいつ?

再委託の報酬の支払い期日

3項は事業者が別の事業者から業務委託された後に、その業務の全部又は一部をフリーランスへ委託(再委託という)した場合のルール。

・再委託する場合は「再委託であること、元委託事業者の名前、元委託事業者の対価支払い期日」をフリーランスに明示した場合に適用される。

・元委託業者から事業者への対価支払い期日を1日目とし、その日から30日以内に支払う。

・1日目から「できるだけ早く」支払い期日を設定しなければいけない。(理由もなく「29日に」としてはいけない)

【条文】フリーランス新法第四条4項|3項に従ってない場合

前項の場合において、報酬の支払期日が定められなかったときは元委託支払期日が、同項の規定に違反して報酬の支払期日が定められたときは元委託支払期日から起算して三十日を経過する日が、それぞれ報酬の支払期日と定められたものとみなす。

支払い期日が3項のルールに従ってない場合はどうなるのか?

こんなときは2

・支払期日が決まってなかった場合、元委託事業者の対価支払日がフリーランスへの報酬支払い期日になる。

・31日以降に支払い期日が定められてしまった時は、30日目を支払い期日に定めたことになる。

【条文】フリーランス新法第四条5項|フリーランス側に事由がある場合

特定業務委託事業者は、第一項若しくは第三項の規定により定められた支払期日又は第二項若しくは前項の支払期日までに報酬を支払わなければならない。ただし、特定受託事業者の責めに帰すべき事由により支払うことができなかったときは、当該事由が消滅した日から起算して六十日(第三項の場合にあっては、三十日)以内に報酬を支払わなければならない。

支払えなかった事由がフリーランス側にある時は?

フリーランス側に理由がある

5項は、事業者が報酬支払期日を守ることと、支払うことが出来なかった事由がフリーランス側にある場合のルール。

・支払うことが出来なかった事由がフリーランス側にある場合は、その事由がなくなった日を一日目とし、改めて60日目(元委託事業者がいる場合は30日目)までに支払い期日を設定し直すことができる。

【条文】フリーランス新法第四条6項|前払金

第三項の場合において、特定業務委託事業者は、元委託者から前払金の支払を受けたときは、元委託業務の全部又は一部について再委託をした特定受託事業者に対して、資材の調達その他の業務委託に係る業務の着手に必要な費用を前払金として支払うよう適切な配慮をしなければならない。

前払金を受け取った事業者はフリーランスにも配慮する必要あり

前払金の配慮

・6項は元委託事業者がいて、事業者が前払金を受け取っている場合のルールについて定められている。

・前払金を受け取っている事業者は、フリーランスに業務の再委託をする場合にも「前払金は必要かな?必要なら渡さなきゃ」と配慮する必要がある。

まとめ

第四条では
・通常の業務委託では、フリーランスから給付/役務の提供があった日から60日以内に(元委託事業者がいる場合は元委託事業者の支払い期日から30日以内)に報酬を支払う期日を定めること
・支払期日がルールに沿って定められていなかった場合は「給付/役務の提供があった日」「60日目」「30日目」のいずれかになってしまうこと
・フリーランス側に支払い期日を左右した事由がある場合は、その事由がなくなった日からカウントされること
・前払金に関する配慮
が定められました。
両者が期日を意識して働くことは、「事業者側の信用を守るため」「フリーランスが安心して働ける環境を整えていくこと」につながります。最初は慣れるのに時間が必要かもしれませんが、業界全体の「あたりまえ」になる日を目指して、業務委託ごとに意識していきましょう。

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